2016年09月12日

マネージャーの涙

ご訪問ありがとうございます。

本日は、あまり思い出したくない話です。

全ての崩壊と破滅は、私のある独断と愚行によって静かに進行して行きました。ある意味、コンビニへの加盟とその業績不振だけが人生転落の原因ではない。その決定的主原因はやはりこれだろう。

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そう考えるのが、やはり自然と言わざるをえない。


形なりにもコンビニを経営していれば、各方面から色々な営業攻勢にさらされる。

バブル期には、株屋に不動産屋は頻繁にやって来た。

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業績が悪ければ、当然門前払いだが、いたずらに多少なりとも利益が蓄積されていると、ついついスケベ根性が露呈されてしまうのは止むをえないだろう。

特に、バブル全盛からその崩壊の過程では、多くの小銭持ちオーナーたちが、その泡に踊らされた。株式と不動産で痛い目にあったオーナー達はかなり多いのではないか。

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そして、体力のないオーナーは、自己破産、夜逃げを免れず、また最悪自ら絶命という末路を余儀なくされた方々も少なからず存在していただろう。

何を隠そう、この私も、完璧なバブルの生き証人であり、その後の失われた20年の体験者に他ならない。決してバブルの被害者だ、などとうそぶくつもりはないが、かなり辛い時代が続き、その後のコンビニ運営に大きく負の影響を与え続けた。

そして、最終的には、破産の道が待っていた。


株に関しては、数百万円の損失を被った。しかし、最大の失敗は土地に手を出して、バブル崩壊と共に大暴落して処分できずに何年も持ち続けてしまったことだ。

千葉県の横芝というところの44坪の土地に飛びついてしまった。

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営業マンが飛び込みでやってきて、各種資料を持ち込んで熱心に力説していた。


「千葉県の九十九里浜は、オーストラリアのゴールドコーストになる!」
「資産価値は、今後は右肩上がり間違いない。」
「官民合同で、鉄道、高速道路と既に具体的なインフラ計画が決定されている。」
「整地されており、水道も引かれている。外構も出来上がっている。電気もすぐ通せるから、すぐにでも家が建てられます。」


何しろ、代々土地を所有したことがない家系であり、土地所有に対する憧れと執着があった。

また、ただ単純に、海が好きであり、九十九里海岸まで4キロぐらいの立地であるというのにも惹かれた。

そして、コンビニで頑張っている自分へのご褒美として、またコンビニ引退後の老後はそこで暮らすのもいいだろうという漠然な気持ちがあったのも事実だった。

また、過労死覚悟の廃人誘発的シフト、超過激長時間労働をこなす上でのモチベーション維持のためにも何らかの目標が必要だと自分に言い聞かせた。

しかも、土地神話がまだまだ説得力があり、バブル全盛期時代に、


1621万円


これはダダ同然に感じた。

そして、最後の殺文句に納得してしまった。

「この先、ご商売をされていれば、何らかの逆風にさらされることもあるでしょう。その時に、この土地がきっと助けてくれるでしょう。日本の社会において、土地が値下がりするなんてことは絶対にありえませんからね。」

私は、業者と共に、現地を訪れ、迷いなく決断してしまった。妻の否定的な意見など耳に入らなかった。そして、頭金も土地価格の一割で審査が通った。

自分としては、バブルに踊らされたという実感がなかったのが命取りだった。

「自分が最終的に住むんだから、別に問題ないだろう。少々高い買い物をしたにすぎない。」


この往生際の悪さが破滅を招いた。



当時の契約内容を見ると、恐れおののく。今じゃ、一ヶ月分も払えない。

残金の1450万円を年利6.6%の30年ローン(固定金利)で毎月93180円の支払いであった。 

契約は、平成元年になされ、その後平成6年に変動金利(年利4.9%)に変更するまでの5年間はこの金額を支払っていた。それでも、その後も毎月78088円の支払いが続いた。

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家賃が12万円近くあったので、かなりの負担だったはずだ。しかし、なんとかバブル景気のおかげで返済できていた。だがそれも、バブル崩壊と共に、完全に家計の特大お荷物となり、生活を圧迫し、厳しい生活を強いられ続けた。

自業自得であり、己の浅はかさを呪うしかなかった。そして、その後の不況対策による金融緩和により、ローンの金利がかなり低下していったのも、土地処分の決断を鈍らせた原因だろう。事実、破産寸前までは、毎月4万円代の支払いであった。


そして、そういう状況の中で、コンビニ競争のドラマが演じられたのだ。

人件費を極限まで削り、家賃を5万まで落として、店に住みついて、なんとか生き抜いてきた。競争店出現による売り上げ低下も原因の一つではあったが、死ぬ気で働かなければいけない理由がここにもあった。

冷静に考えれば、生き地獄を演出したのは、まさにこの自分に他ならない。

そして、コンビニ経営退場の一番の原因は、やはりこのバブルの負の遺産を抱え込んでしまったことに間違い無いだろう。

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私の愚行が、一家を破滅に招いてしまったという事実は否定できない。

ローン残債約440万円を残しての自己破産。

全てが破産管財人の手に委ねられた。

地主の夢が、土地の全てが、泡の如く消えてしまった。

そして、預貯金ゼロのおまけまでついた。

元本のみでも1200万近くのお金を捨ててしまったに等しい。利息部分を入れたら、一体いくら無駄に支払ったことになるのか。

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気分悪くて計算したくも無いが、多分2000万は下らないだろう。

破産後、その土地が30万円ぐらいで落札されたという裁判所の通知を見て己の愚かさを改めて痛感した。マジ胸クソ悪かった。バカは死んでも治らないのだろう。

本当に、死にたいぐらいの虚無感を感じた。

「土地のローン分を貯金していたら、余裕で1000万以上貯まっていたよね。」

静かに、冷静にそう語る妻には頭が上がらない。

「馬鹿なアンタを選んだ私が、間違いだった! 散々コンビニで苦労して、結局、何も残らなかった。挙げ句に私まで破産して、社会的信用をなくした。もう、アンタとは、一緒に生きて行く自信がない。別れましょう。」


こう切り出されたら、否定する言葉が見つからない。

私は、覚悟はできていたが、なぜかその妻の選択肢は免れたようだ。


貧困にあえぐ日々ではあるが、親子4人、平穏無事に暮らせていることに感謝するべきだろう。


余談だが、バブル崩壊後、マネージャーとその土地を見に行った時、私は驚愕する情景を垣間見た。

マネージャーのサングラスの下から頬をつたわる一筋の涙を見てしまった。

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マネージャーは、何を感じて、なぜ涙したのか。サングラス越しではその表情はわからなかった。

その後の、悲惨な破産劇を象徴していたかのような出来事だった。



「あなたのせいで、私の人生めちゃくちゃだわ。一体どうしてくれんのよ!!」


そうブチ切れてくれれば、少しは気が楽になれただろう。


何も語らず静寂の中で涙した妻の、一筋の涙が今でも忘れられない。

どう、罪滅ぼしをしたらいいのかすら思い浮かばない。



後日談だが、最近になって妻が、当時のその涙の理由を静かに語ってくれた。


「こんな辺鄙な土地のために、これから一体いくらのお金を払い続ければいけないの?」
「どんだけ、苦労しなければいけないの?


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妻は、見事にバブルの本質を見抜いていた。



土地を買ってから、私は、一生涯のお小遣いを没収されてしまった。


「あなたにはもう一生涯分のお小遣いをあげたからね。」


仕方ないだろう。当然かもしれない。これで罪滅ぼしになるならと、喜んで受け入れている。



今現在も、未だバブルの後遺症で苦しんでいるオーナーの存在を否定できないだろう。

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ご幸運を祈るしかない。


ご訪問ありがとうございました。

追伸:(ご注意)マネージャーが語った「辺鄙な土地」というのはあくまでも個人的な意見です。土地の周辺には民家も普通にたくさんありました。あくまでも、当時住んでいた自宅地域よりも不便な面が多いと予想されるという意味です。
posted by Sun9 at 01:46| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする