2016年07月14日

マネージャーの反乱

ご訪問ありがとうございます。

私が開業した時期に、近隣で頑張っている店舗があるという事で、当店店舗担当者につれられて、ご挨拶にお伺いしました。距離的には、車で30分程度のところで、首都圏の幹線道路から、少し奥に入った所にその店舗はあった。


周辺には小学校、幼稚園、大きな病院、大きなマンションと、最高のロケーションだった。また、その店舗は、マンションの1F部分で、周囲が全て公道に面しており、独創的なたたずまいであった。

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唯一の敵はかなり先に御三家の一つが身構えていたが、その店舗は24時間営業でなかったために、深夜帯は市場をほぼ独占していたと言える。

オーナーは当時40代前半で、私よりも約一年早く営業していた。某地方都市で、中小企業の課長職に見切りを付けて、引っ越しもして、新たにコンビニ経営に挑戦したという。マネージャーも40代前半で、小学生低学年と幼稚園児の子供を抱えて、かなりハードな日常を強いられていた。

しかし、売上は酒タバコなしでも、日販45万〜50万以上売り上げていて、当方の日販30万そこそこに比べたら本当に羨ましいかぎりだった。しかし、それなりに、忙しさは想像を絶するものがあった。

交通の便がやや不便であったため、スタッフが集まりにくく、かなりタイトだった。特に、深夜はオーナーのワンオペがかなりあった。マネージャーも家事と子育てとシフトを何とかこなしていたが、わがままなパートさん達のおかげで、かなりストレスが溜まっている様子だった。もちろん、二人に休日などない。マネージャーが昼間担当で、オーナーが深夜担当というコンビニ夫婦にありがちな役割分担だった。

そして、その努力と過酷な労働の対価として、かなりの収入があった。余裕で100万円を超える月もあったという。

ここまでの話しであれば、彼は正に成功者であり、フランチャイズシステムをうまく利用して勝利を勝ち得た、紛れもない勝ち組オーナーだ。

毎晩、勝利の美酒に酔いしれても、なんら不思議でない。

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そして、そのまま、経済的優位性を保ちつつ、継続的に富を蓄積して、契約満了で勇退出来れば、また違った人生の絵図が描けたはずだ。


しかし、哀しいかな、そうは問屋が卸してくれないのが、コンビニ業だ。


状況は、気づかぬうちに少しずつ微妙に変化してゆく。

日常が、非日常の出来事で、知らず知らずのうちに毀損されてゆく。

気が付けば、全てがもう後戻りできないほど、夫婦お互いにダメージを受け、不幸の扉をこじ開けてしまっている事にやっと気がつく。

でも、もう、どうする事も出来ない。

もう修復は不可能かもしれない、と感じてしまう。

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全ての引き金は、マネージャーの体調不良だった。

突然の、当日シフトの欠勤。そして、それが、日常化してしまった。


「カミさんの野郎、またプッツン病がでて困ってるんだよ。」

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電話で、そう話すオーナーに緊迫感は感じ取れなかった。単なる、疲労からくる突発性のサボリ位の認識だったのだろう。しかし、冷静に考えてみても、経営者の一人であるマネージャーが、ドタキャンをしてしまう程、精神的にも肉体的にも追いこまれていたのだろう。



そして、数週間後、オーナーからこんな話しを聞かされた。


「いやー、本当にまいったよ。ヤツに、どうしたら真面目にシフトででくれるんだって聞いたら、マンション買ってくれたらちゃんと出るだってよ。しょうがないから、買っちゃったよ。」

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私は、腰を抜かした。

マネージャーの要求も規格外だが、それをすぐ実行してしまったオーナーにもぶったまげた。当時は、バブル経済まっただ中で、都内のマンションは桁違いに高騰していた。

そして、オーナーは、近隣で4500万円クラスの投資用のマンションをローンで買ったのだ。

毎月、40万円近くの支払いだという。しかし、当時の収入から考えれば、そう無理ではないのだろう。現にローンの審査にも簡単にパスした。

オーナーは口は悪いが、彼なりにマネージャーを大切に思っていたと思われる。日頃の頑張りの感謝の気持ちだったのかもしれない。彼なりの愛情表現とも言えないでもない。

しかし、マーネージャーはどうだったのか。

あくまでも私の推測だが、彼女は、



完全ブチ切れ状態




に陥ってしまった気がする。

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コンビニ脱出




を強くアピールしていたのではないか。

辞める方向で、オーナーからなんらかの言葉(話し合い)を引き出したかったのではないか。


でなければ、責任ある立場のいい大人が、仕事をドタキャンするだろうか。

唐突に、悪ふざけのように、マンションを買ってくれ、なんて言うだろうか。


マネージャーの過酷で地獄のような日常への必死の抵抗だったのではないか。


経営者という縛りで、夫婦があらゆるものを犠牲にしないと成り立たないコンビニフランチャイズシステム。

自己責任という名の下で、一刀両断するのにはあまりにも酷と言わざるを得ない。

最大の犠牲者は常に、妻でり、母親であり、主婦であり、経営者の一人である、マネージャーだろう。

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店だけに没頭していればいいオーナーとは違い、仕事量も精神的負担も肉体的疲労も全てオーナーのそれを上回る。倍以上と言っても過言ではないだろう。

そして、マネージャーが壊れてしまったら、もう全てが終わりだ。

私も、妊娠を契機にマネージャーを引退させた時、いかにマネージャーを当てにしていたかという事をイヤと言う程思い知らされた。

コンビニをどうしてもやりたいという強者がいたら、まず、マネージャー(妻)を当てにしない覚悟が必要だ、とアドバイスさせて頂きたい。

そして、少なくとも、確実な定休日は必須だろう。
好きで始めるご自分は休みなどなくてもいい(笑)と思う。
せめて、それが不可能なら、最低限の家事分担、子育ての協力だけはMUSTだろう。

いや、いや、オーナー(旦那さま)一人で店舗経営を全てやればいい。
そして、マネージャーは、家事と子育てに専念してもらう。

私は、この作業分担で、何とか乗り越えて来た。

年齢的に若ければ、可能だ。
30代〜40代であれば、低ランクの契約でも充分できるだろう。

かなりの確率で生き地獄を体験するかもしれないが。

その覚悟がなければ、見送る度胸も必要だ。

自分一人でもやれる。やってやる。

これこそ正に、自己責任の具現化だと確信する。

偉そうにほざいているが、結局破産した私が言うのも、少々、いやかなり説得力を欠いているかもしれない。

先陣の体験談レベルの話しということで軽く聞き流して頂ければ、幸でございます。


マネージャーの精一杯の拒否反応にきちんと対応できなかったオーナーは、とんでもない人生の苦難を味わうことになる。

お互いの意見を述べあって、今後の人生設計を時間をかけて話し合うべきだったのではないか。

規則正しく回転するギヤから外れて、空回りしているチエーンは、もう自力では元に戻せない。

オーナーが、じっくり焦らずチェーンをギヤにかけなおして、また二人で仲良く人生路を並走できる可能性もあった筈だ。

マネージャーの異変を感じ取ったら、それは危険なサインだ。

何が何でも、じっくり話し合う時間を作るべきだと思う。


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しかし、突如幕が切って落とされた。


「てめー、何してやがる! この野郎!」


オーナーの鉄拳が、若者の顔面に容赦なく振り注がれる。

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目の前でたたずむマネージャーのリアクションは想像出来ないが、かなり動揺したハズだ。


また、出て来た人物が、自分の店の深夜の人間だったのを確認した時のオーナーの心拍はいかなるものだったのか。

これは、想像を絶する修羅場だったに違いない。


相変わらずシフトに穴をあけて、朝しばしば化粧をして出かけて行くマネージャーを不審に思い、或る朝、尾行してみた。そして、マネージャーがアパートの戸を開けたら、なんと深夜のスタッフが出て来たではないか!

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このとんでもない事実を見せつけられて、激高しない男はいないだろう。

オーナーの心情は察するにあり余るものがある。

さらに、マネージャーは、逆ギレ状態で、単身でその若いスタッフと彼の生まれ故郷に行くと言い出したのだ。平たく言えば、旦那と子供を捨てて、若い男と、公然かつ平然と駆け落ちすると断言したのだ。

オーナーにとっては、これは、まさしく寝耳に水、青天の霹靂だったに違いない。

妻の不倫を目の当たりにした挙げ句に、なおかつ、逆ギレされて、自分の元から立ち去ると宣言されてしまったのだ。

冗談であって欲しい。夢であって欲しい。信じたくない。

しかし、現実は想像を絶する選択をオーナーに突きつけた。


離婚すれば、契約解除。

全てを水に流して、マネージャーと再起を図るとしても、マネージャーの協力はもはや当てに出来ない。

どちらを選択しても、かなり厳しい日常生活が待ち構えていた。


マネージャーは、私の妻とも親交があり、一連のその事の成り行きを詳しく知ることとなったのだが、やはり、良い悪いは別にして、どう考えても、マネージャーの駆け落ちは阻止するべきと考えて、私の妻が必死に説得した。そして、少し冷静さを取り戻したマネージャーは、取りあえず公然駆け落ちは断念した。


この事件以後、夫婦の亀裂は、もう埋めようがないものとなってしまっただろう。

マネージャーは当初離婚も辞さない様子であったが、オーナーはそれでも、なんとか家庭の崩壊だけは避けたい気持ちが強かったのだろう。結局は全てを許すということで、再度、夫婦の絆の再構築を試みるとのことだった。

しかし、コンビニ廃業という選択は取らなかった。

その後の状況は、不明であったが、マネージャーがすんなりと協力的にシフトインしたとは到底思えない。厳しい家庭環境と労働環境で、夫婦共に心身休まることがなかった事だろう。

成功していたオーナーも、まさかこのような展開になるなんて、予想だにしていなかったことだろう。

「オレは、何の為にコンビニを始めなんだろうか。何を間違えたんだろうか。」

自問自答の日々が続いたに違いない。

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思うに、オーナーだって殆ど全ての自分の時間をコンビニ運営に使っていた。休みもなく、家族のために働いた。酒に溺れることもなく、バクチ系も殆どやらない。ましてや、外部に不適切な関係の女性などいるはずもない。すべて、家族の幸福という大義のために、深夜一人シフトを精力的にこなしていた。家事に関しては不明だが、子供達の面倒はよく見ていた。深夜明けで幼稚園の送り迎えをやっていたのには感心させられた。

オーナーは精一杯頑張っていた。

仮に、開業の同意をしていたとしても、奥様自身がそのマネージャーという立場の過酷極まりない立ち位置は想定できなかったに違いない。


そして、コンビニ経営の実体験者でないと理解できない、夫婦の断絶に陥り、悶絶していたのだろう。

勤務時間帯のズレから生じる不協和音。

やがて、会話も少なくなる。

お互い口を開けば、お互いのダメ出しばかり。

もう、喧嘩をする気力すらない。

圧倒的に負担が大きいマネージャーは、かなりのストレスを溜め込む事になる。


くどいようだが、もう一度声を大にして、叫びたい。

マネージャーを当てにしない事だ。どんな苦境でも、絶対に当てにしてはいけない。

人がいなければ、24時間自分がいるではないか。

一時間でも、30分でも、事務所で寝れるではないか。

要は、マネージャーの人件費分をオーナーが働けばいい。

そして、マネージャーを完全リリースするべきだ。

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マネージャーには、家事子育てに専念してもらえばいい。

いくら、夫婦といえども、マネージャーの人生を苦汁に満ちた現世地獄に変質させ、奴隷生活の道連れにする権利などオーナーにはないハズだ。

一方的に、浮気をして、家庭を破壊して、旦那を傷つけて、子供まで捨てようとした。普通の主婦だった女性が、そこまでチェンジするだろうか。

その負の原動力、原因を作ったのは、いったい誰なのか。


それは、まぎれもなく、コンビニ経営というアメに飛びついた自分(旦那さま)に他ならない。

この現実を、直視し自覚し、覚悟を決めてマネージャーを開放するべきだ。



そして、コンビニ経営の厳しい労働環境、経営環境を完璧に理解しているマネージャーは、仕事以外の面においては全てにおいて協力的になってくれる(と思う)。
そして、極限状態で命を賭けて家族のため働く「オーナー」に、感謝するハズだ(多分)。

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そして、どうしても、どうしても、店が大ピンチの時は、自ら志願して、シフトインしてくれるだろう(多分)。

私の元マネージャー(妻)も旦那の苦境を推測して、心配して、よく声をかけてくれた。

「いないなら、出ようか?」

「大丈夫。なんとかなるよ。」

「過労死されたら、困るから。」

「どの人生も終わるさって、宗方コーチも言ってるし。」
(エースを狙え!を愛読されていた方ならご理解して頂けるでしょう)

「ばーか、勝手に死なれちゃ残された家族がこまるんだよ!」

いつものお決まりのやり取りで、終わってしまいがちだったが、好きで、この道を選んだ以上、妻の犠牲はあってはならないという信念があった。

私は、妻を店に引っ張り出したら、その時点で負けだ!と考えていた。妻を当てにしないで、仕事ができてこそ、真のオーナーだろう、それこそ自己責任だろ、という妙なこだわりがあった。だから、埼玉に移転するまでは、妻にヘルプしてもらった記憶はない。(朝方、痛風が悪化して歩けなくなり、数回だけ助けてもらったかもしれない)

過労死するんじゃないかという程疲れていても、シフトに穴があいても、盆暮れ正月で人手不足でも、とにかく一人で乗り切った。妻が、家で子供達と平穏無事な日常を過ごせているということが、自分のモチベーションにもつながっていた。

もっとも、現場を離れて、何年も経過していたので、マネージャーのスキルも新人レベル以下であるいう状況も、彼女の出番を皆無にする理由のひとつだった。


今回のこの出来事も、私から言わせれば、そこまで現実逃避に追いこんでしまったオーナーにもかなりの責任があると言わざるを得ない。それほど、マネージャーの負担は大き過ぎたのだろう。


彼女は何としてでも、コンンビを辞めたかったのではないか。どんな手段を使ってもいい。とにかく、逃げ出したい。そして、家族で普通に平穏無事な日常を過ごしたい。

切に、そう願っていた気がする。

しかし、脱出不可能の現実に意気消沈し、将来の希望も見えてこない日常生活に堪えきれなくなってしまったのではないか。

私を、こんなにまで追いこんだ、亭主にはもう未練も興味もない。

もうどうでもいい、なるようになればいい。(と思ったかどうか不明だが、近い感情があったものと推定する)

マネージャーは自らの自制心すらコントロールできなくなる程、心身ともに完全に疲弊しきっていたのだろう。



さらに、悲劇は続いた。バブルの崩壊という想定外の現実を突きつけられて、途方に暮れる。

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徐々に売り上げが後退して継続的に収入減が続く。はじけた泡は、形を変えて、庶民の生活に黒い陰を落とす。そして、それは、絶好調だった店舗にもモロに影響が出てきた。

そして、毎月の40万円の支払いがキツくなり、遂に禁断の売上金に手をつけてしまったのだ。

こうなると、もう、全てが破滅へと突き進んでしまう。

当然、契約解除というきついお仕置きが待っていた。


その後、オーナー、マネージャーは何の言葉もかわす事なく忽然と消えてしまった。


その後の話しだが、彼らが去った数週間後、本部がくじ引きで酒の免許を引き当て、日販が60万円台となったという話しを聞いた。もう少し、辛抱できたら、再起出来たかもしれない。残念でならない。



株でもFXでも商品先物でも、殆どの人が勝ち逃げ出来ない。
競馬でもパチンコでもスロットでも同じだ。

負けるまで、負け越すまでやってしまうのが、バクチだ。

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とことん負けて、再起不能の一歩手前までやってしまう。

コンビニ経営もある意味同じだ。

契約上の理由で絶好調の時に辞められない。
成功して多額の給与を手にしたら辞める気が起きない。

しかし、バクチより恐ろしいのは、

おけらになっても辞められない。
そう、手持ち資金がなくなっても、退散できない。
借金をしてまでも、賭け続けなければいけない。

完全に負けを認めても、抜け出す事ができない。

もはや、強制賭博なんじゃね?

とか言ったら、大げさ大将軍だろうか(笑)


ご訪問ありがとうございました。
posted by Sun9 at 17:45| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする