2016年04月13日

Flashback 罪と罰(2)

ご訪問ありがとうございます。


前回の話しでは、内部不正の対応に多少(かなり?)の迷走部分があったことは否めない。今回は、同じような事件がまた発生してしまい、全く別の方法で対処した件をお話します。時期は、前回Aの事件の後、移転する2〜3年前位だったと思います。

今回の主人公のスタッフは当時高校1or2年生で、店の直ぐ裏の住人で、5人家族の長男でした。それこそ幼稚園児のころから彼の事は知っていました。ご夫婦も気さくな方達で、本人も含めて兄弟姉妹もいいお客様でした。
No.15 強盗、万引き、詐欺、内部不正等の犯罪被害 (2.内部不正-追記)でも触れましたが、近所の幼稚園児、小学生が成長して、高校生になるとアルバイトとして力を貸してくれる場合があり、殆どの場合はオーナーの味方となってくれたが、一人だけやらかしたのがいました、と語りましたが、実は彼がその例外の人物でした。

まるっきりの見ず知らずの他人ではないために、難しい判断を迫られる。まして、近所の子供の頃から知っていた人間であれば、なおさらだ。そして、超常連さんとなっているご家族とも当然顔見知りであり、良好な関係を築いていれば、さらに事態を複雑にしてしまう。


しかし、本人は、そんな事はおかまい無しで、不正をやらかしてくれた。

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高校生の彼は、夕方の時間帯、17時〜22時のシフトに入っていました。もちろん、信頼して、レジの両替を任せていました。しかし、時として、千円単位で金庫内が合わない時がしばしばありました。不足のあった日の点検レシートを全て保管していたので、ふと、ある事実に気がつきました。金庫内不足が出ている日に、必ず「彼」がいるではないか。

「まさか、さすがに、それはないだろう。彼がそんな事をする筈がない。」

根拠のない信頼感が疑惑へと変化し、そして犯人への確信と変わるのにそう時間はかからなかった。またしても、彼の時間帯で金庫内が高額紙幣分合わない。信じたくはなかったが、確信があった。防犯ビデオに釘付けになり、入念にレジ前と、バックルームの金庫を録画してある部分を何回も見た。

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そして、決定的瞬間を発見してしまった。

4〜5時間の空しい作業は、確実な証拠を手に入れて終了した。

手口としては、単純だが、大胆だった。まず、自分は疑われないと思っていたのだろう。

両替するために、レジからお金を取り出し、バックルームに入り、金庫に着く前にポケットに入れる。そして、レジから持ち出した分だけ金庫から持ち出して、レジに戻す。


レジから紙幣を取り出したはずなのに、金庫前では手ぶら状態で金庫の引き出しを開けていた。拡大して見れば、手に何も持っていないのは一目瞭然だった。

正直、怒りより悲しみの方が大きかった。

こうも簡単に、人の信用を裏切り、人様のお金を盗めるものなのだろうか?

この子のご両親、ご家族とどう接すればいいのだろうか?

やはり、親には知らせた方がいいのだろうか。自営業の父親はまさか自分の子供が金を盗んだなんで信じられないだろう。母親も、錯乱状態に陥るかもしれない。兄弟姉妹にバレたら、それこそ一生白い目で見られるかもしれない。

とにかく、本人には話すしかない。

嫌な、仕事だ。


後日、たまたま買い物に来た彼をバックルームに呼んで、静かに話した。

「ちょっと、見てもらいたいものがあるんだけど、いい?」

ニヤついて少し紅潮していた彼は、黙ってうなずいた。

「これ、なんだけど、なんだか分かる?」

例の犯行部分の一部始終を見せた。私は、スグに謝罪の言葉を予想した。しかし、彼から思わぬ言葉が飛び出した。

「なんすか、これ。」

私は、耳を疑った。こいつ、認めるどころか、知らぬ存ぜぬを押し通す気だ。もう一度、ビデオを確認しながら見せた。

「レジから、万札持って行ってるよな?見えるだろ?」
「はあ」
「認めるな?」
「はい」

「じゃ、ここで、その万札ないだろ?どこいっちゃたんだろうね。ほら、手に持ってないだろ。金庫に入れてないよな。」
「いや、ちゃんと入れてます!」

こいつは、罪を認めないつもりだ。ふてぶてしいガキだ。誰が見ても、明白だ。画面を拡大して、スローで見せてやった。

「何処に万札がある?教えてくれよ。」

「明らかに、何も持ってないだろ?」

「・・・・・」

茫然自失とはまさにこの事だろう。いきなり、決定的証拠を見せつけられて、ぐうの音も出ない。私は、静かに背中を押してやった。


「どうして、こんなことしたんだ?」
「君のご家族が知ったら、本当に悲しむぞ。」

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「すいません・・・でした。」

さすがに観念して、全てを話しました。


親が、数ヶ月前に離婚して、彼と父親は裏の家に住んでいるが、兄弟姉妹と母親は別の所に暮らしているとの事。父親の仕事が不調で、金欠気味で、自分の生活費が足りなくても父親には言えずに、つい目の前の現金に手が出てしまったとのこと。

そう言われてみれば、彼の母親と、その兄弟姉妹をここ最近ずーと見かけていない事実に気がついた。

だからと言って、許される訳がない。

もちろん盗んだお金は全額返してもらう。そして、親に話して、とことん再教育してもらううのが筋だろう。取りあえず、

「後日、処分を下すから、○○日後に来てくれ。」


そう、告げて、追い返した。


「二度とオレの前にその顔見せるな。店は永久出入り禁止とする。盗んだ金は、給料から天引きで、残金があれば今払う。万が一、約束を破って店に来たら、父親に今回の犯罪行為を全て話す。警察にも話す。選択の余地なんてないよな。じゃ、ここに、今の内容を手書きで書いて、サインしてくれ。」

書類を書き上げて、彼は、謝罪の言葉を残して静かに去って行きました。

やはり、親に話すのは辞めました。

父親に話しをすれば、少なからず、ヤツの家庭を破壊してしまうだろう。未成年者のケツは親が拭いて当然なんだろうが、今回の事件で父親との断絶もありうる。母親はもっと悲しむだろう。自分の責任だと思い込んでしまうだろう。親の離婚で、もう既に破壊されている家庭をこれ以上破壊してしまうのはなんとも後味悪い。

自ら猛省して、今後の生きる教訓となれば、それでいいのではないか。

確かに、甘い処分かもしれない。
私の処分は間違っていたのかもしれない。
犯罪者に対する社会の現実の厳しさを知るべきだったのかもしれない。

しかし、同じ親としたら、身内の、しかも我が子の犯罪など知りたくもないし、信じたくもない。成年後の犯罪であれば、かなり自己責任の部分もあり、親としても悲しい気持ちには変わりないが、諦めもつくだろう。

少年法の適用で少年が人さまを殺めても、その罪は限定的だ。

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ましてや、パクリ行為なんて屁みたいな罪なのかもしれない。だから、大目に見たと言う訳ではないが、良い事、悪い事を身をもって体験して、今回の不正行為を猛省し今後の自らずからの行動を律するきっかけとなれば、それで十分なのではないか。

私の独りよがりの親のエゴが派生したのかもしれない。

また、本人も充分反省しているだろう。時間の経過とともに「バカな事をしてしまった」と心に長期間残っていくことだろう。前話のAも、当初は誠意ある反省の弁もなく、あきれ果てる程の非常識ぶりを露呈していた。しかし、忘れた頃に、わざわざ謝罪しに顔を出してくれた。やはり彼も、時間の経過とともに悩んだのだろう。

そして、また、こんなことも思い出してしまいました。


いつ頃の話しなのか、思い出せません。都内での店舗の話しです。かなり、稀な体験をしました。

ふと気がつくと、懐かしい元スタッフがレジ前にいた。辞めて、3〜4年は経過していたと思う。


「オーナー、本当に申し訳ありませんでした。これ・・・」

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不用意に差し出された 1万円札 を見て、すぐピンと来ました。

「ずっと、気にしてたの?」

苦笑いしつつも、はっきりと、

「はい。ついやってしまいました。本当にすいませんでした。」

そう言い残して、彼は足早に店を後にしました。そして、どことなく晴れ晴れとした表情が印象的だった。

彼は、高校時代のシフト中にレジから一万円を盗んだのだろう。それが時間の経過とともに、己を許せなくなり、ついにはその罪を精算したくて以上のようなアクションを起こしたのだろう。

話しが逸れますが、一万円近くのレジ不足は、しばしば発生する。殆どが、千円、5千円札と万札との見間違いだ。これは痛い。差額分のお金を差し上げて、無料で商品をお持ち帰り頂くというダブルロスだ。もちろん、スタッフに弁済させられない。労基法に抵触するからだ。このリスク、被害も全てオーナーが一人で被ることになる。ブラック店舗では、その時間帯で入った人間が連帯責任で全額弁償とか、レジ担当者が特定されている場合は、不足分は給料天引きです、なんていう処理もおかまい無しで横行している。共同責任を押し付けられたら、シフト時間帯で一万円近くの不足が出た場合、当日のギャラが殆どパーになってしまう。

「じゃ、現金過剰の場合は、その差額分はもらえるのかよ?」

と考えても不思議ではない。そして、不満が蓄積されると現金過剰を自作自演して、レジから平然とお金を抜いて行く。レジは多少の経費がかかっても、スーパーみたいに自動レジにするべきかも知れませんね。本来、本部負担でそうするべきだと思いますが、現実は全てオーナー負担らしいです。


実は彼は、某俳優養成所の研究生で、トップクラスに在籍していた。なんと、私が血迷って入所した養成所(第4話 無限地獄の始まり編で詳細)と同じところだったのだ。そして、限られたわずかな優秀な研究生しか在籍出来ない最上特別クラスにいたのです。実際、某有名女優の子役として、刑事物のドラマに出演した彼をテレビで見ました。

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高校生の割に礼儀正しく、言葉遣いもまさに完璧で社会人を経験した人間と殆ど変わらず、もちろん仕事も人並み以上にこなしてくれました。当然、私も一目置いていました。

そんな、超優等生な彼が、レジから金を抜き取っていたなんて、本当に驚きました。しかも、それをかなり時間が経過して返却しに来るなんて、2度びっくりでした。


私は、その後、埼玉に移転した後は、高校生の採用を辞めました。もちろん、高校生でもキチンと仕事ができる人が殆どですが、現金の事故は圧倒的に高校生が多かったです。

しかし、現状の雇用状況は悲惨極まりないものがあるようです。ほぼ最低時給に近い時給では、その高校生ですら集まらない。しかも、セブンのブラック大賞受賞後の業界イメージダウンで敬遠されがちだという。時給の割に覚える事が多すぎで、アホらしい、キレる変な客が来る等マイナスイメージのオンパレード状態だという。

やはり、外堀は埋まりつつあるのか。

貴重な人材が集まらない、育たない。

崩壊へのカウントダウンは、静かに、そして、確実に進んでいる。

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そして、ヤツはその後の閉店の宴会には当然顔を出さなかった。健気に約束を守っていたのだろう。


この事件を思い出して、前回登場のAに対しても、同様な処置、処分が適切ではなかったのかと思う今日この頃です。

やはり、血気盛んな30代ではそこまでは冷静に判断出来なかったのだろう。

「犯罪者の家庭環境がどうなろうと、そんなの心配してられるか。甘えるんじゃないよ。罪を憎んで、人も憎む。これ、普通じゃないの?こっちは被害者なんだからさ。」

と考えていたかは不明ですが、それに近い精神状態だった事は否定出来ません。

埼玉に移転した後も、内部不正はありましたが、基本的には、本部への報告、反省文の提出、店鋪への出入り禁止、不正行為の弁済、シフト即日解除後、後日解雇という処分で対応しました。

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警察、親への連絡は、よほど悪質であると判断した場合に、そうしようと考えていましたが、オーナー職を返上するまでには、その事例は一件もありませんでした。


ご訪問ありがとうございました。
posted by Sun9 at 16:07| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする