2016年03月11日

300万円のお願い

ご訪問ありがとうございます。


前回の記事で「自殺」という文字を入力していて、ふと昔の出来事を思い出してしまいました。

今回、「コンビニ再編」のつまらない(?)話より、鮮明に蘇った、よりシリアスな実話をご紹介させて頂きたいと思いました。


時期的に丁度第三話「生き地獄」の頃だったと思います。

店鋪開店当初からのお客様で、年の頃合いは60才代前半でした。

隣にコンビニが出店してきた時に、

「何て非常識な奴らだ。商売道徳のかけらもないのか。オレはそういうやり方は好かん。死んでも行かないよ。
だから、店長もがんばってな。負けるなよ!」

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ご近所らしく、超常連さんのそのお言葉には、何回も励まされました。

そして、たまたま年賀状印刷のご注文を頂いて、仕上がりに不備があり謝罪にお伺いした近所の某会社の倉庫に、その超常連さんがいました。

「こんな近くにいらっしゃったんですね!」

「目と鼻の先だろ? 知らなかった?」

お話によると、勤続20〜30年(確か30年だったと思います)で、もう何年かで定年だとのこと。定年になったら使ってくんない?とか冗談とも本気ともとれるお話をされていました。

いかにも、人柄の良さがにじみ出ていて、背広を上手に着こなして、ダンディズム漂う「いいオヤジ」でした。



「店長さ、オレ、クビになっちゃたよ。社長と喧嘩しちゃってさ。」

「えー、そうなんですか。それは大変でしたね。」

「店長さ、使ってくんない?」

突然の事態と申し出に、かなり驚きましたが、どう考えてみても、人件費節約の生き地獄体現中である私(当店)に人様を雇用できる余裕などある訳がない。全て、正直に真実を語り、自分の置かれた苦境を説明して「雇用出来ない理由」をなんとかご了承して頂きました。


そして、暫くして、明るい顔して超常連さんがやって来ました。

「いやー、この間は悪かったね。実は、社長に頭下げて、なんとかまた使ってもらえるようになった。ちょっと
給料減らされちゃったけどね。」

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「良かったじゃないですか!」

「ああ、一瞬どうなるかと思って焦ったよ、本当に。」



そして、数カ月平穏無事に過ごしていましたが、再びまた悲劇が起きました。

「店長、またやっちゃたよ。また喧嘩して、もう終わりだ。もう、戻れない。」


力なく語る超常連さんの背広のネクタイが乱れ、上着も少しヨレていました。

それから待ち受ける60才半ばの厳し過ぎる人生を象徴しているかのようでした。

それからも、超常連さんの来客頻度は変わりませんでしたが、お買い上げ商品が変わっていきまいた。

以前はお買い上げにならなかった、ワンカップ系の日本酒がラインアップされ、その数が日ごとに増えていきました。そのうちに、ワンカップ以外は買わずに、夕方に来店されて4〜5本購入されていくというパターンになりました。

相変わらず無職で、もう仕事を探すのは諦めたとのことでした。

また、独身故の自由な身であるのも「アルコール依存性」を加速させてしまったのではないかと思われます。
余計なお世話ですが、心配してくれる奥様、子供がいらっしゃったら、また別な日常があったのかもしれませんね。



あの、ダンディーないいオヤジのイメージは完全に消え失せ、眼光はなく、うつろな目で、汚れたズボンと何日も洗濯してないようなアンダーシャツを着ていました。

栄養失調気味なのか、やせ細り、ひげも未手入れで髪もぼさぼさになっていきました。

話す言葉も聞き取れないくらい弱々しく、この先どうなるんだろうかと心配になる程でした。

レジで釣り銭を渡す時に、手が小刻みに震えていました。

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もう、完全に「アル中」オヤジ でした。



「店長、自殺の仕方の本ってなんか売ってる?そんなの売ってると思う?」

いつもと違うきりっとした雰囲気で、酒を買った後に何気なく尋ねられました。

「多分あるんじゃないですかね。うちの店ではないと思いますけど」

「そーなんだ。店長さ、一番確実で楽に死ねる方法って何だと思う?」
「いや、オレは死なないよ、ちょっと気になってさ。」

この時点で、彼の本気度には気が付かなくて、バカな私は語ってしまいました。

「なんだか、一酸化炭素中毒が確実で、苦痛も少ないらしいですよ。」
「ほら、練炭でよく人が事故で死にますよね。苦痛なく眠るように死んでしまうらしいですね。」

「あ、そうなんだ。あの練炭で?どこで手に入るの?教えてくんない?」

急変したその表情から、異様な緊迫感を感じ取り、ヤバいと思いました。

「いや、いや、あくまでも、噂ですから。事実は分かりませんよ。」

このオヤジ、本当に死にたがっている。

そういう雰囲気がリアルに伝わって来ました。

放っておいたら、何かやらかしそうだ。

でも、どうする事も出来ない。

警察に相談するべきだろうか。
いや、区役所のどこかに相談出来る窓口がないだろうか。



それから、数日後、彼がやって来ました。薄ら笑いを浮かべて、切り出しました。

「店長、お願いがあるんだが・・・」

「何でしょうか、私に出来る事なら。」

「300万出すから、オレを殺してくれないか。」

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「えっ、えー?悪いご冗談を!」

「いや、冗談じゃない。もう生きていてもつまんないし。金ならある程度ある。頼むから、自殺に見せかけて殺してくんないかな。300万じゃ少ないか?」

真面目に話しをする彼は、ガチまじモードでした。

「そんなこと、できる訳ないでしょう。それじゃ、私は殺人者になってしまいますよ。」

そんなの、バレないようにいくらでも出来るんじゃないのか。頼むから、何とかならないか、と強くお願いされました。

300万円というお金は確かに魅力的でした。しかし、殺人者になんてなれる訳けないですよね。

彼は、本当に、心身共にかなり病んでしまっていたのだろう。

「ある程度のお金があるなら、海外で余生を過ごすというのもいいらしいですよ。まだまだ、人生これからじゃないですか。真剣に考えてみたらどうですか?」

無言で、出て行く彼の背中は小さく、猫背がより一層悲哀を誘っていた。
もう、生きているのが面倒くさい、という雰囲気が痛々しかった。

その後も、来店の度に、殺人依頼の話しを執拗にしていました。
そして、酒の購入量もかなり増え、10本近く買って行きました。

自殺は怖いし、自らアクションを起こすのは面倒だ。知らない間に、死んでしまいたい。

そのような気持ちだったのだろうか。



ある日のこと、いつものように、大量に酒を買って、店を出て行こうとした彼は、突然入り口近くでしゃがみ込み、身動きが取れなくなりました。

「大丈夫ですか?」

問いかけにも無反応で、うつろな目でポカーンとしていました。

マズい、体に何か異変があったのかもしれない。

すぐさま、119番通報しました。

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救急車が直に到着して、彼は手際よく車内に運ばれ、サイレンの音とともに去って行きました。

そして、それが、今生の別れとなってしまいました。

その後、彼の姿を見ることは二度とありませんでした。そして、また、その後の彼の安否、所在等全てが不明となり、知るすべもありませんでした。

無事に、その後生きているのだろうか。

もし、ご健在なら、もう80才以上だろう。

ご健康である事を願うと同時に、もし仮に天寿を全うされたなら、平穏無事に安らかに幕を閉じるこことができたことを切に願うばかりである。


しかし、こうなる前に、なんとか出来なかったものだろうかと悔いが残った。だが、生き地獄アリ地獄でもがき苦しんでいた自分に人様の人生にクビを突っ込んでいる余裕などなかった。

ある意味、生き地獄脱出失敗となり、契約解除(廃業)→職無し→一家離散→単身→職ナシ→生活苦→自殺or
孤独死 の可能性を認識し、人生の教訓となったのかもしれない。



あんなに紳士的でダンディーな方が失業とともにどんどん劣化していく様子、生き様を見てつくづく感じました。

働けるうちが花なのかもしれない。

生き地獄でも、働ける事に感謝しよう。

家族はやはり、あった方がいいのかもしれない。

そう、妻を、子供達を無条件で大切にしよう。

なんとか、この直面した大ピンチを乗り切ろう。

この生き地獄からなんとしてもはい上がろう。

そして、最期の勝利を信じよう。

勝利の美酒は、高級な赤ワインに決めた。


そして、私は、過酷な死の(死んでもおかしくない)シフトをこなしていきまいた。


結果として、生き地獄から生還できましたが、その後も生き地獄は無情にも繰り返されました。


そして、それから数十年後の最終的な結末はご存知のとおりでございます。





破産





が待っていました。

あの、苦しみは何だったのか。

まるで、喜劇ですよね。今思い出すと。



長期的ビジョンを描けなかった。
目の前の<日常>に慣れて、甘えて、変革の意識を持てなかった。

また、廃業後の自分の価値を充分認識しておくべきだった。

コンビニ廃業=負け組敗者、という一般的な評価。 
そして、これに高齢者というオマケが加われば、完璧な就職難民の仲間入りだ。

30代ならまだ充分市場価値があると思う。
40代だと、やや厳しい場面もあるかも知れない。
そして、なんの特技、資格もない50代は、絶望的だ。(私だけかも知れないが)

60才半ば前で会社(社会)から放り出されてしまった「超常連さん」の気持ちが痛い程理解できる今日この頃の自分がいる。


痛風で禁酒を余儀なくされている自分はアル中になる心配はないが、しらふで現実社会と向き合うのが辛いときは、やはり、酒を飲んでしまう。

やはり、生が一番旨い。缶なら、一番搾りかスーパードライの35缶で充分。
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日本酒は辛口をそのまま冷やでいける。
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ワインだったら断然赤がいい。
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ウイスキーなら山崎で、オンザロックかな。
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焼酎だったら本格の黒糖があればつい深酒してしまう。


禁酒をしていても、やはり酒は完璧には辞められませんよね。
(苦笑)
 


ご訪問ありあがとうございました。
posted by Sun9 at 01:27| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする