2015年11月24日

第33話 パンチ君

ご訪問ありがとうございます。


こんな出来事を思い出しました。

以前、パンチパーマという髪型がはやっていた頃の話しです。明確な時期が思い出せませんが、キーワードがパンチパーマです。パンチ佐藤氏がご活躍されていた時でしょうか。そんな時期に、パンチ軍団と呼ばれていた(店舗スタッフの間で)少年達がいました。どう見ても高校生位で、いつも5〜6人の集団で行動していました。

偏見を持った人から見れば、かなりの威圧感があったと思います。彼らはその上眉毛も剃り、人相もかなり悪く見えました。大人達から見れば

札付きの不良達

に見えたかもしれません。

彼らは、店に集団で来て、買い物をすると速やかに出て行きました。別段、普通のお客様と変わりませんでした。ただ、最初は見た目でかなりの威圧感があり、ある種の恐怖感を抱きました。

集団で計画的にパクられたどう対応しようか。
なんか因縁付けられて絡まれたどうしよう。
店の内外で長時間たむろされたら他のお客様に悪影響を及ぼすだろう。


しかし彼らはごく普通の少年達でした。
普通に挨拶もすれば、きちんと丁寧な言葉で会話をしました。

一言二言言葉を交わすうちに常連のお客様としての認識が芽生えてきました。

彼らは、地元の元高校生達で、バイトをしたり友達とつるんで青春を謳歌していました。

f9e326d87748b37fa8ea82da1608c568_s.jpg



そんなある日の事、軍団のリーダー格の少年が店内の小スペース(弁当や飲み物を飲食するスペース)で長時間一人で長居する頻度が増して来た事に気がつきました。


「どうしたんですか?家に帰らないんですか?親が心配していますよ。」
「最近、遅くまでここにいるけど、大丈夫なんですか?」


深夜の2時頃になっても帰ろうとしない彼に、声をかけてみました。すると彼は、重い口を開きました。内容を要約すると、両親が小学生の頃離婚して、父親と生活してきた。その父親が、最近再婚してその女性(新たな母親となる方)が小学生の子供を連れて来た。父親とその女性とその子供の輪に入って行けずに、今の家に自分の居場所がなくなった。

ce4716dcf863e3b17201925b0c1b5792_s.jpg


家に居ても落ち着かない。家を出たいが資金もない。今は、友達の家を転々としているがそう何回も友達の家に迷惑をかけられない。どうしようもなくて、ここ(店内の小スペース)にいる。


複雑な家庭環境で私が体験した事のない状況に置かれているパンチ君の気持は理解したくてもできない。もちろん無責任な発言はできないし、したくもない。現状で困っている彼を救うことは出来ないが、しばしの休息なら提供できる。

d0749a71d946d1f81ff6b7f5367bf999_s.jpg


「それじゃ、ここで朝までいても構わないけど、あからさまに寝ているという状態はご遠慮頂きたい。他のお客様に真似されたら、注意出来なくなってしまうので。ちょっと、申し訳ないけど、起きてるような状態で寝てもらってもいいですか?」

パンチ君は喜んで私の提案を快諾してくれました。そして、廃棄になる弁当とか食べる物を無償で提供しました。

そして、その後、彼のご両親とおぼしき人物が息子の行方を探して店舗に訪問されて来ました。


「パンチパーマの柄の悪そうな高校生位の子供達が来てませんか?」


スグにピンと来ましたが私は悩みました。


「いつも夜ここにいますよ。」


とは言えませんでした。ご両親が深夜彼のいる時間に店舗にやって来て、修羅場になる可能性もあります。他のお客様の手前もあります。取りあえず、安否の確認だけでも出来れば安心してもらえるかも知れない、と考えました。

「多分、それらしきお客様がいらっしゃいますので、ビデオご覧になりますか?」

ご両親に息子さんが軍団で来店しているときの防犯ビデオを見て頂いて息子の安否を確認してもらいました。ご両親はやや安心して店を後にしました。もし、又息子がまた店に来たら心配しているから連絡だけでもいいからしてくれと伝えて欲しいとのことでした。




「いいご両親じゃないですか。凄く心配していましたよ。特にお母さんは本気で心配していて、息子のいそうな所を必死で探しまわっている様子でした。取りあえず、心配ないって一言電話してみてもいいんじゃないでしょうか?」


パンチ君は黙って一点を見つめていました。


その後、パンチ君はある日突然姿を見せなくなり、私の記憶からもほぼ消えかけていました。


コンビニのオーナーは時としてお客様の悩み事に、不運、不幸に巻き込まれる事がある。そして、深入せずに、現状で出来る範囲の協力、助言、提案は惜しまず提供しました。
(あくまでも私の場合です)




「店長、お久しぶりです。誰だか分かりますか?」

ガタイのいい好青年がキラキラした瞳で、いい笑顔を添えて語りかけて来た。突然の出来事に戸惑いを隠せず、

「えーっと、申し訳ございません。どちら様でしょうか?」

「あのときは、本当にお世話になりました。店で何日も寝かせてもらって、ご飯まで出してもらって。」

5fea1cc5df344ca630e570bdac20aa8a_s.jpg


「あー、あの時の!久しぶりですね。元気でしたか?」

もう、あれから5〜6年は経っていたと思います。話しによると、パンチ君はその後、自宅に帰り親と話し合い、家を出て働くという選択をしたそうです。細かい話しは思い出せませんが、私が感動したのはその後建築関係の仕事をして、手に職を付け見事に独立して、会社を立ち上げて小さいながらも社長として充実した日々を送っているということでした。確かその時パンチ君は20代前半だったハズです。

正直パンチ君のサクセスストーリーに嫉妬を禁じ得ませんでした。

私みたいに、金でオーナーの地位を得た人間と、自力で努力を積み重ね、そして会社を立ち上げ日々頑張っている人間。どちらが「いいね!」を取れるか一目瞭然だ。しかも、20代前半の若さでだ。なんだか、自分がとてもちっぽけに見えた。

いかにも建築系の体つきで全身からあふれ出る充実オーラがまぶしかった。

2499b08df1151131503024f0afc36b17_s.jpg



いやいやいや、私も負けてられない!

気合いで頑張って、真の経営者に進化してみせる!!

a3d9488c7f1eb714e496edae89648fd3_s.jpg






しかし、破産でした。

877c8b7a18cc956b901260168feb9e18_s.jpg



ご訪問ありがとうございました。
posted by Sun9 at 23:24| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする