2014年12月03日

第3話 生き地獄



ご訪問ありがとうございます。



競争店の出現から約2年経過した平成8年でした。

店舗右手70メートル先に元から営業していた酒屋さんがコンビニになっちゃいました。

当時は酒類は今のように自由化されておらず厳密な地域割当制度でしかもくじ引きでした。

新規で扱うのは99%不可能でした。

当時の話で酒販免許は2千万位の価値があったそうです。

当然、自店舗は なし・なし(マージャンじゃないです)でした。

酒なし煙草なしの店舗は当時そう呼ばれていました。

なしなしの私の店は右真隣に奇麗なコンビニがあり、そして、今度は左70メートル先にも新しいコンビニが出店して来る!

しかも酒ありの手作り弁当もありですよぉ!

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やばいよ


絶対やばいよこれ


本当にやばすぎだよ!


絶体絶命の大ピンチ!




命を削って生活環境の激変に耐えてきました。

バックルームに段ボールを敷いて、極寒(激暑)に耐え、しばしの睡眠を取る。(当時、バックルームにはエアコンなし)

ホームレスの辛さが多少なりとも理解出来た。


週に2〜3日しか自宅に帰れなくても、15〜18時間の長時間労働にもメゲズに、食生活の乱れから激太りしても、

絶対に

負けない、


めげない、


諦めない。



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その努力の甲斐があって売上もなんとか持ち直して、日販も42万円台まで復活していたのに・・・

さらなる競争相手とどう戦えと言うのか!

神は私に試練を与え過ぎじゃないの?

マジ、勘弁してくれよ!(激怒)


この状況での売上増は期待出来ないだろう。

これ以上もう経費削減も不可能だろ!

やってらんねぇーよ!



とは考えませんでした。

無謀な私は更なる経費削減を断行してしまいました。

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若さゆえ、いえ、バカさゆえの決断だったかもしれません。

やはり削れるのは人件費しかありませんでした。

6時〜11時までは完全一人シフト
17時から完全一人でもやる
もちろん24時からは完全一人シフト

時として 
18時間完全一人シフト
最長で36時間シフト
なんていうのもありました。

当時、人件費を月60万円台でこなしていました。
マネージャー(妻)抜きで単身で頑張りました。
この数字がいかに異常であるか、ご経験のある方ならご理解頂けるかと思います。


バックルームを改造して、プライベートルームを作り、一万円の折りたたみベッドを買って持ち込みました。

「オーナーさん、バックルームを私物化しないで下さい。あくまでも、仕事をする場ですから。」

そんな無慈悲な本部の警告も完全無視せざるを得ません。

とにかく、長期戦覚悟です。

ここで、過労死、病死しても、もう

本望だよ! と割り切りました。

シフトの都合で長期間自宅に帰れないのはもはや当たり前となりました。
そして、慢性的な睡眠不足も当たり前となりました。

不規則極まりない劣悪な就業環境、廃棄物ばかり食する乱れた食生活、ストレスからくる短時間大量飲酒により体は異様に肥満体型へと劣化して無惨なフォルムをさらけ出し、家族からは「デブ」呼ばわりされ失笑されていたのが少々辛かった。

また、レジ前で気を失いかける程の強烈な睡魔は本当に辛かったです。
PCの前での発注の最中に居眠りして何度イスから転げ落ちた事か。



「あの、すいませ〜ん!」

「あっ、申し訳ないです! スグにお伺い致します!」

休憩中に居眠りしてお客様に起こされる。
お客様に対して大変なご迷惑であり失礼極まりない。


また、ふと居眠りから覚醒してレジ前に飛び出す。

レジカウンターには買い物カゴが中に商品が入ったままで放置されていた。

とんだ失態だ。
お客様は激怒されていただろう。
何とも言えない自己嫌悪に陥る。

また、一人シフトのためトイレに行くタイミングが難しい。
店の中が無人にならなければ行けない。
膀胱炎になるかもというぐらい我慢したこともある。
そして、わずかな隙を見つけてトイレに飛び込む。

短時間で用を済まさなければいけないストレスで寿命が縮む。

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特に、大○をしている最中にお客様入店を知らせるチャイムが鳴った時は、生きた心地がしない。そして、

「誰かいねーのかよ!」

なんて声が聞こえて来たら、その行為の途中でも出て行かなければならない。

また、深夜3時頃、宅配便の受付、レジ前調理のご注文、コピーの依頼、普通のお買い物のお客様がたまたま同時にお見えになると、かなり大変な事になる。ちょっとしたパニックに陥り、お客様をお待たせしてしまう。
お客様がキレないようにかなり気を使い、Maxスピードで接客をする。

パニックが終わり、なんとか切り抜けたとホットする。

あれ、電子レンジが点滅している。
「しまった、弁当渡し忘れた!」

あら、レジカウンターの隅にペットボトルが一本放置されている。
「しまった、レジ袋に入れ忘れた!」

そして、何気にコピー機の上蓋を持ち上げたら、免許証が残っている。
「しまった、さっきコピーしてあげて、返却し忘れた!マズい!!」


一人シフトだからついミスをしてしまった!忘れてしまった!なんて言い訳になりません。

そして、深い自己嫌悪に陥り、激怒したお客様の再来店、怒りのクレーム電話を怯えながら何時間も待つ事になる。しかし、一人しかいないため、そのクレーム対応にも限界がある。

この数時間は、いくら自分が悪いとはいえ、本当に生きた心地がしませんでした。


毎日が辛かった。痛かった。

何かに取り付かれたように戦い続けました。
自分の限界への挑戦だったのでしょうか。

なんとしても、生きていかなければならない。
殆ど単身赴任状態での孤軍奮闘。

しかし、だれも恨むことは出来ない。
自ら選んで飛び込んだ仕事だ。

自己責任という言葉で納得できるレベルを遥かに超えていた気もする。

しかし、愚痴る暇があったら寝る。
己の、不運を呪う暇があったら明日のシフトの心配をした方が健全だ。


そう、最終的には、泥水をすすってでも健康を害してでも、
生き地獄から這い上がるしかない。

俺は勝つ!


絶対に負けない!!



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結果として自己満足的自虐的な意味不明なテンションで日々熱くシフトをこなしていました。

ヤルしか、選択枝はない。

今の不満、明日への不安を、超過激シフト、超長時間労働で、誤摩化し、かき消していたのかもしれない。



今考えると、30代だから出来てしまったのかもしれない。

疲れを知らない、獣のような肉体。
誰にでもある、人生の中で心身ともに最も充実している30代。

そんな貴重な時間を私は生きる為に泥沼の中で必死にもがいていました。まさに生き地獄のような日常を黙って耐えていました。

これは、幼い子供達、病弱な義母をほぼ単身で守り、父親不在の家族を文句一つ言わずに平穏無事に切り盛りしてくれた妻のお陰だったと断言できます。

世間一般で言われる、コンビニ家族の不和、夫婦の不仲からの離婚問題等は私達には無縁でした。それぞれの役割を明確にして、分担された役割をそれぞれ無難に確実にこなしていました。それでも、ほんの一瞬の団らんは稀にありました。

しかし、今思えば、このほんの一時の家庭の平穏無事な幸福感の存在が私の将来の危機意識を麻痺させ、変革意識の芽を摘み取ってしまったのではないかと思われます。

「コンビニの生活って、こんなもんだろ。ほんの一瞬でもいい。家族の笑顔に包まれて過ごせる時間があるだけでも、幸せなんじゃないのか。」と感じていたのも事実だった。


しかし、父親不在の生活を強いられ、ほぼ母子家庭に等しい状況でも、我慢強く必死で耐えていた家内がついにぶち切れて、

「もう、こんな生活、耐えられない。いい加減にして!」
「家族を取るか、コンビニを取るかハッキリして頂戴!」

妻にこう詰め寄られていたら、別の思考、選択枝もあり得たのかも知れない。

また、耐えさえすれば、なんとか生活できる収入が手に出来たのが災いしたのかもしれない。



そして、
「頑張れば、堪え忍べば、また美味しい日々が必ず来るに違いない。」

だから、今は、

耐えて、頑張るしかない!!

一度美味しい果実を口にしてしまった私は、根拠のない確信に正常な感覚を麻痺させられていたのかもしれません。




しかし、敵は本能寺、じゃなく本部にもあり。

「オーナーさん、マネージャーがシフトに出ないのは明らかに契約違反です。いかなる理由があろうとも契約は守ってもらわないと困ります。」

エリアマネージャーの声が今も脳裏に焼き付いています。

本部としては当然の行為(指導)なのでしょう。

マネージャー(妻)がシフトに出ないのは重大な契約違反!とのこと。
確かにFC契約書にはそう記されている。

しかし、約20キロ離れたところで、小さな子供と赤子と病弱な義母の面倒を一人でみている元マネージャーが店に出れるハズはありません。店に出ろとも言える筈ありません。そんなことは本部も100も承知している筈だ。この無茶ぶりはレベルの低いイジメとしか取れませんでした。

自分一人で血反吐を吐く程頑張っていても、ロイヤリティをキチンと納めていても、契約違反は契約違反なのだろう。他店の手前、建前的にも厳重注意しなければいけないのだろう。

そして、一方的な契約の解除の可能性すらちらつかせてきた。

泣き面にハチ とは正にこのことだろう。

地獄のシフトに追われ本部からの契約解除に揺さぶられる。

心身共に疲労困憊している自分には、有効な切り札もなく思考能力もほぼ停止状態だった。

ここでぶち切れたら全てを失う、と思いました。

実は、私が都内から埼玉県に引っ越しをする際に、当時の代表取締役にキチンと許可を取っています。自宅に帰れない時は店に泊まり込みで頑張ります、と伝えたら、体にはくれぐれも気をつけて下さいと励まして下さいました。当然、妻のシフトも不可能になることは承知の上と理解していました。
(あまりシフトには出れなくなるという説明だったかも知れませんが)

社長が変わってからのこのイジメに近い追い込みには本当に腹が立ちました。

しかし、私は必死で懇願しました。

エリアマネージャーに契約違反の明確な理由をしたためました。

そして、本部も最終的には黙認せざるを得ず、なんとか契約解除の危機を切り抜けました。

取りあえず、本部としては厳重注意した事実が必要だったのでしょう。




地元では、状況的に一番先に潰れるのは
うちの店だろうというのが大多数でした。

そりゃ、そうでしょう。
80メートルの直線上で2店鋪に挟まれいて、ハード的に一番古い店です。
自然消滅して当然ですよね。


しかし、しかし、見事に期待(?)を裏切ってしまいました。


なんと、うちの店だけが勝ち残ってしまいました!


あり得ない!と思いました。

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平成10年 右のコンビニ(メジャーな新店舗)廃業。

平成11年 左のコンビニ(酒ありの一番新しい店舗)廃業。


生き地獄


脱出成功!




遂に非人間的日常生活から解放される!

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久しぶりに自宅に帰り、夜、出勤前に小さい娘があどけない顔で言い放つ。

「パパ、今度いつ来るの?また来てね。」

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いや、いや、いや、愛人じゃないんだからさ。


その後、平穏無事な日々が2年程続きます。



しかし、最大のピンチ到来!!


ご訪問ありがとうございました。








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posted by Sun9 at 00:06| コンビニ競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする