2017年10月29日

本気で限界を感じた事件(2)

ご訪問ありがとうございます。

夏の暑さも一区切りついた9月の某日であった。

それは、1本の電話から幕が切って落とされることになった。

夜の22時半頃、妻(マネージャー)にたたき起こされて、店の緊急事態を知らされた。

話によると、見た目筋系の人が弁当に箸が入ってなかったということで、怒鳴り込んできて、オーナーを出せと言っているとのこと。目覚めて、いきなりクレームの電話の対応で少々面食らったが、スグに彼女の携帯を取上げた。

「大変申し訳ございませんでした。」

「テメー、ふざけんなよ!この前も入ってなくて取りに来たんだぞ!」

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かなり激高していた。あらんばかりの罵詈雑言を浴びせられた挙句に、スグに店に来いと怒鳴られた。

「これからだと、少なくとも30分以上はお待たせしてしまうことになりますが・・・」

「いいから早くこいって言ってんだろ、バカヤロウ!」

話の落としどころが全くなかった。大抵の場合は、お客様の苦言を全て聞いた上で、こちらが丁重に謝罪すれば何とか大事には至らずに解決するのが普通であった。

一方的に切られたあとに、店舗に連絡を入れて、状況を確認した。

「オーナー、ハンパないですよ!レジ前でずーと怒鳴りっぱなしで、仕事になりません。警察よんでもいいですか?」

現場は、かなり緊迫している様子だった。警察に通報して、万が一キレられたらそれこそ大変なことになるかもしれない。

「スグに行くから、警察はちょっとまってて。何とか持ちこたえてくれ。」

この時点で、通常のお客さまとは異質な人かもしれないという不安を感じ取った。

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急いでバイクにまたがり、店舗へ向かった。

そして、遠巻きに異様な光景を目にした。


店舗駐車場にパトカーが3台停車していて、警察官が8人ぐらい円陣を組んでいるのが見えた。

心拍の乱れを感じつつ、恐怖感と安堵感が入り混じった、奇妙な感覚を記憶している。


バイクを停めて、その円陣に加わった。

すると、円陣の中の一人の私服の男が、なにやら不気味な笑みを浮かべて、警察官と話をしていた。

状況がスグに理解できた私は、その私服の男に近寄り、声をかけた。

「この度は、本当にご迷惑をおかけいたしまして大変申し訳ございませんでした。」

深々と頭を下げて、謝罪しました。

怒声を覚悟していた私は、一瞬あっけにとられた。

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「いや、もう別にいいよ。分ればいい。二度目だったので、オレもついつい頭に血がのぼっちゃてさ。」

30代後半から40代前半のややイケメン風で少し長髪気味で、綺麗に手入れをしている様子で、どうみてもその筋のひとには見えなかった。しかし、両腕からはタトゥーがはみ出していた。

何事もなかったように、男は少し買い物をして、店舗を後にした。私は、彼に張り付いて、何度も謝罪の言葉を繰り返した。

そして、様子を見守っていた警察官は、小声で教えてくれた。

「確かに、マエ(前科)はないみたいだね。本人も言っていたけど、ヤクザじゃないと思う。」

また、スタッフの要請で、弁当を手渡す一部始終をビデオで確認したが、なんとスタッフはキチンと箸を弁当の入った袋に入れていた。

なんとも、後味の悪い事件であった。こちらには、ミスがなかったのに、一方的に犯罪者にさせられてしまった。しかし、アノ状況では、ビデオで探している時間はなかったし、たとえ見つけたとしても、男はその事実を肯定しないだろう。

「てめー、オレが嘘ついてるって言いたいのかよ!」

とか言い張って、完全否定するだろうし、怒りMAX状態では火に油を注ぐようなものだったのかもしれない。

稀ではあるが、ビデオを見せても、その事実を絶対に認めない輩もいる。

しかし、何故かその筋の人間じゃないと聞いて、ホッとしなのは事実だ。

そして、その後、頻繁に普通のお客様として来店してくれたのだが、その本性が露呈されて、想定外の事件に巻きこまれることになるとはこの時点では全く想像もできなかった。

そして、廃業の葛藤の合間に頭をもたげてきては私を精神的に追い詰めていった。

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「もう、何もかにもイヤになった。一体どうしたらいいんだよ。」

深い闇に包まれて、息をするのにも違和感を感じた。

できるわけないが、全てを捨て、逃走したくなった。

夜はなかなか寝つけず、得体の知れない不安感が突然襲いかかってくる。

私のSOSは誰にも届かず、誰にも発信すらできずにいた。

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さらに、本部と店舗大家さんとのトラブルにより、突然の契約終了という「ポイ捨て」の可能性も出てきた。

もはやモチベーションを維持する気力すら失せている自分に気がつき、愕然とさせられた。

このころから、目に見えない崩壊へのカウントダウンは既に始まっていたのだろう。

日常のストレスに押しつぶされそうになりつつも人件費カットによる激務が刹那の命の実感を提供してくれていた。

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しかし、こんな状況のなかでも、家族のために何とかしなければという強迫観念だけはあった。

全てをリセットして、人生をやり直したい。

できることなら、家族と残りの人生を楽しく、平和に過ごせたらどんなに幸せだろうか。

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父親として失格だったかもしれない。

夫として、不適格だったかもしれない。

そして、人間としても最低なレベルに陥る可能性がある。

しかし、そんな自分でも、コンビニを辞めて、僅かな可能性に賭けるしかない、という意識が次第に強くなっていくのを感じたのもこのころだったと思う。

このままでは終われないだろ!

すでに亡くなった妻のご両親に顔向けできないだろ。

何とかする。何とかしてみせる!

絶望と希望がクロスして、淡い光が、暗闇の中に見えていた。

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posted by Sun9 at 21:04| 事件簿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする